2015年06月09日

アウディ S1

 アウディのボトムレンジであるA1のスポーツモデルです。
 A1ってのはまあ、日本車で云えばヴィッツとかフィットみたいな前輪駆動の街乗り実用モデルですね。サイズ感も横幅以外は似たようなもんです。
 1リッタと1.4リッタのターボエンジンを搭載し、特に後者の1.4ターボは150馬力近くを叩き出す、そこそこ元気のいいクルマですね。
 重量があるので、キビキビ速い「かっとびホットハッチ」ではないですが、どっしりしてて高速道路を長いこと走るような用途から、攻めるまでいかずともちょっと元気に山道なんかを走るにも向いてそうなクルマです。
 とはいえ基本は街乗り実用車ですから(フォルクスワーゲン・ポロと同じクルマですしね)、スポーツ用途云々で乗るようなクルマではないです……ので、じゃあこいつにちょっと元気のいいエンジン積んでスポーツカーに仕立てたろ!みたいなクルマです一言で云えば。

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 同じコンポーネントのフォルクスワーゲン・ポロにも「GTI」という伝統のバッヂがあって、これは現行モデルは1.8リッタのターボ。S1はこれよりもさらに大きな2リッタのターボエンジンを突っ込み、その馬力は以前乗ってたE46 330iとまったく同じ231馬力、いま乗ってるインプレッサワゴンWRX(240馬力)とほぼおなじ。1.8リッターターボのゴルフのGTIよりも車体は小さいのにさらにハイパワーです。
 さすがにFFではこの馬力を食いきれないか、駆動形式はアウディ伝統のクワトロになっております。
 しかしそんなことはどうでもよくて(?)、こいつの最大にして最高の特徴は、ポロGTIにも、そしてゴルフGTIにもないMTがあることなんですね。
 MTがあるっていうか、MTしかないんですけど。敷居の高いクルマだなあ。

 MTは6速で、ほんとにフツーの3ペダルです。
 現在の正規輸入アウディには実質これしかMTがないので(R8にはあるのかな)、そういう意味でも非常に貴重。聴けば、単にちっこい車体にでかいエンジンを押しこんだせいで、DSGミッションが載る場所がなくなっちまったんだそうな。なるほど。本来ならDSGを載せたかったわけですね。
 クラッチはむっちゃくちゃ軽いです。Dテントむし(ライトエース)とたいしてかわらん。割と重いGF8インプレッサとは比べるべくもなく、しかもなんだか妙に上のほうにミートポイントがあって、慣れるまでエンストさせそうで怖かったです。個体差かな。

 外装だけ見ると、アウディだってのを意識しなければほんとにフツーのハッチバックです。
 クルマが好きな人が見れば、なかなか国産車にはないエッジのきいたデザインですし、おっ!ってなると思いますが、2ドアと4ドア(スポーツバックという名称だそうです)が選べるうち、4ドアだとほんとにフツー。クルマに詳しくない人が見たら、フィットと区別つかないかも。
 2ドアだとちょっとサイドガラスの処理で目を引きますが、それもあえて見れば、って感じですね。
 とはいえ、後ろがスラントしているので、実用ハッチバックというよりも、一昔前のシビックみたいなスポーツハッチバックのイメージですね。
 そして、そのしわ寄せもあって、荷室はそんなに広くありません。
 いや、厳密には面積は普通の広さなんですけど、リアが寝ているうえに床面が高いんですよね。
 あんまりカサがあるものはたぶん積めません。それはA1でも同じでしょうけど。もちろん、普通に買い物行くとか、3人くらい2泊3日程度の旅行の荷物くらいなら楽勝です。
 そして、外で見ると想像以上に小さく見えます。
 長さはもちろん非常にコンパクトなんですが、横幅が少し広いので、3ナンバになってしまっております。まったく気にならない差ですけどね。

 そしてエンジン音がむちゃくちゃ元気です。
 そういうチューニングをしてるんでしょうけど、少し低くて心地よい感じ。
 なんですけど、このあたりはさすがに外車(というか、ちょっと値段の高い独車というべきか)で、ドアを閉めてしまうと回りの音はほとんど聞こえません。
 アクセルを開けると、排気音だけが入ってくるという心地よさ。
 オーディオをかけたらもう聴こえない気がしますが、逆に云えば、オーディオを聴きながら走るにはよさそうです。

 実際に走らせてみると、かなり下のほうから過給するので、一気にドカンと加速していきます。
 とはいえインプレッサ(GF8)ほど過激ではなく、じわっと大出力が出てくる感じ。NAのE46 330iより加速力は上かもしれません。E46のほうが重たいので、当たり前といえば当たり前ですけどね。

 で、このクルマ、3速がやけにワイドレシオで、町中走るだけならほぼ2速か3速の間を行き来するだけで済んでしまいます。
 ちょっとハイペースなバイパス道路とかで4速入れとけばいいかな、くらいで、5速6速は高速道路用ですね。
 ターボの恩恵か、3速からでも加速力はあるので、余計に街乗りでは3速まででほぼ事足ります。
 走行中に一気に加速したいときは、2速に落として一気に踏んでやればOKです。

 このクルマ、普段はFFで走り、いざって時に後輪も回転させてトルクを確保するようになってるんだそうです。
 コーナリング時にトルクをいい塩梅で4輪で分け合えるような電子制御システムもついていて、安定感は非常に高いんだそうな。
 町中の試乗でそれを試すことはできませんけども。

 ただやっぱり、どっしりしてるというか、クルマが重たい感じはあります。
 ちょっとハイペースで曲がると、どこか全体的に遅れてついてくる感じというか。
 FFベースの大排気量ですからね、どうしてもフロントヘビーになるのかなあ。重量自体はGF8とあんまり変わらないハズなんですけど。
 山道を勢いよく攻めるとかってんじゃなくて、ちょっとハイペースで首都高を流すとか、そういう使い方ならすごく気持ちよく走れると思います。
 安全装置がすごくしっかりしてますし、いきなりずるっと滑るような事態にもなりにくいでしょうしね。

 そしてこのクルマが400万円オーバーというのが、また高いのか安いのか。
 アウディというモデルレンジの中で、このエンジン+クワトロであるということを考えたら間違いなく安いんですけど、この小さいクルマに400万円が払える人ってのはやっぱり限られますよねと。
 単純に乗ってて気持ちよくて、そこそこの居住性とある程度のパワーがある、飛ばして楽しいクルマってことでいえば、86/BRZとかスバルWRXとか買ったほうが幸せになれるんじゃないかみたいな。
 上にも書いたとおり、ぱっと見たときは普通のコンパクトカーですから、誰が見てもイバリがきくクルマではありません。
 なので、400万円したんだぜ!っていうのを人に云ってもあんまり伝わらないかもしれません……が、まあ、それでいながら実はハイパワー高性能ってのがたまらんって人もいるでしょうし、そういう人にはいいのかな。
 あとはあれですね、86/BRZはクーペスタイルだし、WRXになるとデザインにしても雰囲気にしてもちょっとがちゃがちゃしてるから、もうちょっと落ち着いた雰囲気でパワーとある程度の実用性を、みたいな人とか、ダウンサイザーっていうんですかね、ちょっとハイペースで走ることもあるけど、でかいクルマはいやだ、ってひととか。
 いちばんびっくりしたのは、このクルマのカタログとかWEBサイトに載ってるメインの色、つまりイメージカラーはおそらくフェニックスイエローという黄色になると思うんですけど、このクルマは色がソリッドの黒全部オプションで、どの色にするにしてもオプションカラーがかかります。
 パールホワイトとかのメタリック色は5万円くらいの常識的な(?)オプションカラー代なんですけど、イメージカラーのフェニックスイエローはなんとオプション代25万円。オールペイントじゃないんだから。
 この黄色を「これがいいからこれで」って躊躇なく選べる人が買うクルマなんだなあってのがなんかすごくターゲットとしてわかりやすいかな。

 この手のコンパクトカーのハイパフォーマンスモデルって、このあたりは同じような値段のフォルクスワーゲン ゴルフGTIがあって、その上はいきなりBMW M135iの600万円、AMG A45の700万円になってしまうわけで、あんまり選択肢もないっていうか、そもそもこんな酔狂なものを欲しがる人もそんなにはいないんでしょう、ていうか、実質いまのところゴルフGTIがあればあとは別にいいかなって感じなんでしょうね。
 その中でも今のところ唯一のMT車ってことでいえば、唯一の選択肢になりうるのかな。

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posted by TAKAMI Yui at 13:14| Comment(0) | 試乗
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