2015年06月29日

スバル WRX STI(Type S)

 ちょうどわたしがクルマが好きな中学生高校生くらいだった頃、スバルがレオーネの後継として出したレガシィが大きくなりすぎ(っても5ナンバですから、いまとはやはり少し感覚がちがいますね)、カローラクラスの小型セダンがラインナップに欲しいってことで出たのが初代のインプレッサでした。
 1.5リッタ〜1.8リッタあたりのフツーのエンジンを積んだ、あえていえばレオーネ譲りの4WD機構が優秀だったくらいであとはなんてことないFF(ベース)のファミリーセダンだったわけですが、これにスバルがレガシィの代わりのラリーベースとして用意したのがWRXというモデル。
 これは当時はまだまだ多かった走り好きの若モノ中心に大ヒットし、当時のライバルだった三菱・ランサーエボリューションと切磋琢磨しつつ、最終的には馬力は当時の自主規制値だった280馬力まで到達して、小型軽量4WDハイパワーという走り屋の世界でのひとつの定番になったわけです。
 ……というか、ランサーもそうでしたが、インプレッサといえばこのWRXのようなハイパワーモデルになってしまい、本来の目的であるファミリーセダンを見かけるほうが稀、みたいな状況になってきてしまいました。

 当時わたしは高校生でしたが、そんなに「速い」クルマに興味があったわけではなく、むしろステーションワゴンとか1BOXみたいなRV車に興味があったんですけど、そこへきて「カッコよくて速い」インプレッサワゴンのWRXは憧れの一台でした。
 なので、ここにきて去年、この当時の憧れだったWRXのワゴンを購入したわけです。
 これでも十分すぎるほど速くて安定していて、こんなクルマもう出てこないだろうなあという感じはあります。
 それとは別に、インプレッサWRXはどんどん進化して、やはり通常のファミリーセダンとしての役割はもはやどこかに置き去りつつ、ハイパワー4WD小型セダン(残念ながらワゴンは途中でなくなってしまったので)として次々進化していったわけです。
 そしてその過程で、通常のWRX(WRX自体が通常ではないので変な言い方なんですけど)をさらにレーシーにしたインプレッサ WRX STIモデルが登場して、もはやファミリーカーではない、本格スポーツセダンとしてのインプレッサが完成していきました。
 このあたりはランサーもそうですが、シビックとかにも似てますね。

 で。
 2015年現在、インプレッサというクルマはまだ新車で普通に買えるクルマなのですが、これにはいままでのような「WRX」はありません。
 ボディも大きくなり、レガシィでは大きすぎる人へ向けて、ファミリーセダンやワゴン、クロスオーバSUVとして、初代モデルが本来目指したファミリー向けのクルマに戻っていきました。
 で、この新生インプレッサ、案外町中でも見かけます。
 ここがランサーやシビックと少し違う感じで、ランサーにしてもシビックにしてもスポーツモデル以外は見かけることがなくなって国内では消滅してしまいましたが、インプレッサはなんとなく生き残ってる感じが面白いところです。

 んが、スバルが今まで育ててきたWRXブランドをみすみす捨てるわけもなく、WRXは「インプレッサ」の名前を捨て、「WRX」という単独の車種として復活しました。
 と、毎回頭が長いこの項目ですが、これが今回の試乗車です。

 大きくなってしまったインプレッサをベースにすることに限界を感じたのか知りませんが、ベースはインプレッサより一回り小さいレヴォーグ。
 レヴォーグはセダンがない、ステーションワゴン専用モデルなので、これのセダンにハイパワーエンジンを載せたのがコレです。
 だからまあ、あえて云うなら「レヴォーグWRX」ですね。

IMG_3857.JPG

 WRXにもWRX STIとWRX S4という二種類があり、前者は伝統の(それこそわたしのGF8にも積まれてる)EJ20ターボエンジン。後者はBRZに積まれてるエンジンにターボを付けたFA20という新型エンジンで、馬力はSTIが308馬力、S4が300馬力、ほとんど差がありません。大きな違いは、STIが6速MTなのに対し、S4がCVT(!)になるということでしょうか。
 逆に300馬力を制御できるCVTってすげえ。これもちょっと乗ってみたい。

 後ろから見るとウイングがかなり派手です。
 Type Sではないモデルだとこのウイングがオプションになるんだそうな。
 ビルシュタインのダンパ、BBSのホイール付き。
 カタログとかで見るよりかなり小さく見えます。

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 内装はとても近代的です。
 メータ以外は液晶パネルだらけ。電源が入ってないとなにもわかりません。
 エアコンの上、センタ部分にはターボのブーストメータまで(液晶表示で)ついてきます。
 USBのジャックとかもついてるあたりがとても近代的。

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 ミッションはSTIなのでマニュアル。
 クラッチもほどよく軽くて気持ちがいい感じ。
 SIドライブもついてます。

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 シートはバケットシートですが、純正でついてるものですから、ガッチガチで身動きできないようなものではないです。
 ほどよくサポートしてくれる感じ。
 GF8のシートもバケットですが、あれは多少ホールド性がいい反面きつめなので、あれよりも快適です。
 もしかして海外を強く意識してるモデルだから、シート自体が大きいのかも。

 で、走らせてみると。
 まず驚くのは、エンジン音が静かであることでしょう。
 この手のクルマだと、雰囲気作りのためにわざとエンジン音を車内に入れたりするものですが、これはほんとに静かなんですよ。
 もちろん踏めば音は聞こえるんですが、この手のクルマとしては圧倒的に静かです。この外装であの音ってのはちょっと意外ってくらい。

 1.5トンをわずかに切る重さなので、GF8よりは200キロ近く重いんですが、低速からじわっと効くターボによってガツンと加速します。
 この加速感はほんとに気持ちいい。
 そして、アクセル・クラッチ・ハンドルのすべてが重みがなく、すごく自然な操作感なのがとてもいい。
 これ、少し山道とかで走らせたらむっちゃ楽しいと思います。
 とにかくパワーがすごいんで、相応の技術がないと速くは走らせづらいかもしれませんが。4WDなので制御の幅は広そうですけどね。

 そして足まわりも堅さはないです。
 前回のアウディS1よりも柔らかいんじゃないかな。
 もちろんふにゃふにゃではなくて、しっかりした堅さはあるので、飛ばせば飛ばしただけ仕事はしてくれそう。
 これは上にも書いたとおり、ビルシュタインの足が入ってるモデルなので、ノーマルモデルだともう少し柔らかいんだそうな。

 なによりですね、クルマが小さいので、運転しやすいんですね。
 車両感覚で云えば、GF8とたいしてかわらないくらい。
 そしてなぜか(?)むちゃくちゃ車内からの視認性がいいんですよコレ。
 後部座席も4人で座るには広く、トランクもそこそこで、運転しててもすごく快適です。

 このクルマ、今までの超本格スポーツセダンWRXというイメージで臨むと、少し違ったものに感じるんじゃないかなと思うんですね。
 なんていうか、もっとスパルタンというか、日常の快適性みたいなものを捨て去ったうえでの高性能をイメージしてたんですよ。
 足回りもガチガチで、クラッチも重くて、遮音材が薄くて音がガンガン入ってくる、みたいな。
 それが好きだって人も多いハズですし、わざわざこんなクルマを好んで買おうという人なら、それを許容するだろうってことなわけです。

 ところがそうでなくて、音も静かだし町中運転しててもストレスはなく、同乗者もそれなりにちゃんと乗ってられる。
 ちょっとした上級セダンのハイパフォーマンスモデルみたいな趣きなんですよね。
 個人的には、これがすごくいいんですよ。
 購入しようとするとTypeSで500万円のクルマですから、やはりいろいろなものを犠牲にしてこれを選ぶにはすこし覚悟がいるわけで。
 走るのが好きで、MTがよくて、(走り方面で)ハイパワーでカッコいいのがいいけど4人がストレスなく乗れて、音なんかも静かなほうがいいかなあなんてクルマ、これ意外に存在してないわけです。
 もちろん本格的にサーキットを攻めるみたいなハシリ寄りの使い方をするには、この手の標準でついてきてしまう快適装備が邪魔になることもありそうですし、そのぶん安く軽くしてくれよ!みたいなのもあるんだと思うんですけどね。
 そこを狙いすぎるとやはり誰にもついてこられないクルマになってしまうわけなんで、ここはすごくよい落としどころなんじゃないかな。
 そもそもだからといってこのクルマが遅いってことじゃなくて、むしろむっちゃくちゃ速いと思います。そしてサーキットでも山道でも首都高でも、ある意味町中でも十分に楽しめるってのはやっぱり大きいと思います。

 そう考えれば、500万円という値段はこのクルマとして考えれば安いのかも。
 快適に移動できるセダンに、ハイパワーである意味究極のスポーツ性を足したクルマですからね。
 普通のレヴォーグセダン代が250万円だと考えれば、プラス250万円の付加価値は、この手のスポーツカーが欲しい人には出して惜しくない値段でしょう。
 ついでに云うと、たぶんこのクルマ、売るときの下取り価格むっちゃくちゃ高いと思いますので、乗り変えるときにはけっこうその差は縮まるんじゃないかなと。
 十年以上乗るとか、改造しまくっちゃうとか、あるいは乱暴に走って修復歴ありになっちゃいましたなんてことになるとあんまり関係ない話ですけどね。
 TypeSではない通常グレードなら450万円で買えますので、どうせサスもホイールも変えるからいいよって人ならこっちでしょう。

 しかしやはりこの羽根は派手だよなあ。
 これがあると一気にヤンチャ感が高まる感じ。

IMG_3854.JPG

 素のモデルだとこの羽根がオプションになるんで、ここまで派手じゃないほうがいいなあと思って素のモデルを見てみると、これは小さなリアスポイラがついてるだけになる……んですが、なんかこれはこれで微妙なんですよ。
 昔のセダンみたいにトランクが長いわけではなく、さらにちょっとリアウインドウからテール部分にかけて尻下がりになってるので、このウイングがないとなんともしまらない感じになっちゃうんですね。
 逆にこれがないと、後ろからみたら300馬力のハイパワースポーツだとは絶対に思われない地味なスタイルになるので、逆に面白いかもしれませんが。

 乗ってみるとむちゃくちゃハイスペックながら実用的です。
 ほんと、面白いクルマだなあ、コレ。
posted by TAKAMI Yui at 14:59| Comment(0) | 試乗
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