2014年06月24日

ダイハツ コペン Robe 5MT

 いつの間にかモデルチェンジしていた(というか、いつの間にかなくなってていつの間にか新モデルが出ていた)コペン。
 で、これが結構カッコイイ。
 前の丸っこい、かわいい系デザインも悪くないけど、今度のは正統派オープンスポーツな感じがして悪くない感じ。
 新聞広告に「ダイハツ店どこでも実車があります」と書いてあったんで、これは見に行きたいと思って近くのダイハツへ。

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 展示車かと思ったら試乗車でした。
 しかもCVTじゃなく5MT仕様。
 やるな、ダイハツ。

 この日は雨でしたので、オープンドライブはままならなかったものの、雰囲気は十分掴むことができました。
 エンジンは64馬力のターボエンジン。
 と云っても軽ミニバンに積まれてるタイプの低燃費ターボではなく、いわゆる走行性能のためのターボです。
 なので、低速でのトルクはもちろんですが、高回転までかなり過給するので、たぶん回して走ると燃費は極悪でしょうな。
 そんなことを気にして買うクルマではありませんが、トルクがあるので回さないでも普通に走れます。実用エンジンとしても十分通用する感じ。

 室内に乗りこむと、これが結構広いんですよ。
 もちろんゆったりとはいきませんが、二人乗りでも十分に楽しめる広さ。
 軽枠の中では相当がんばってるんじゃないかな。
 屋根を開ければ広々感はさらに広がるでしょうから、云うことないと思います。
 ちなみにトランクは前に乗ってたビートとどっこいどっこいですが、屋根を閉めた状態ではゴルフバックが入るくらいの大きさです。
 また、そのせいですごくカッコよくなってて、特に屋根を開けたときのバランスの良さはまさにオープン2シータのそれです。旧コペンのまるっこい感じとも違う、ロードスターとかの英国オープンの流れとも違う、イマドキのオープンカーのカッコ良さです。
 やっぱりスポーツカーはカッコよくなきゃいけませんぜ。

 クラッチは軽めですが、ギアはスコスコと気持ちよく入ります。
 ローに入れて走りだすと、これが想像以上にトルクがありますが、割とフラットトルクなので回せば回すだけ加速していきます。CVTのエンジン音に加速がついてこない感じとは大違い。気持ちいいです。
 そして、3500回転くらいを境に、エンジン音が微妙に低くなり、いかにもスポーツカーな感じの音に変わります。もともと3気筒660ccのエンジンとしてはかなり音が低めにチューンしてあって気持ちがいいんですが、回していくとさらに気持ちのいい音になっていきます。
 で、早いかどうかというと、64馬力ですから別にそこまで早くはないんですが、加速感があるので速度域に対しての体感速度がかなり違います。そしてさらに、ステアリングの応答がすごく素直で、足の動きも含めてかなり素直に曲がるので、ものすごく楽しいんですよ。昔乗ってたビートを思い出します。
 で、コーナからの脱出でアクセルを踏むとその分だけ加速するので、ほんとにスポーツカー的な運転が楽しめるんですね。FFだからとか、そういうネガはほとんど消えています。
 こればかりは、たとえば後部座席の広さとかトランクの容量とか、いろんなものを犠牲にできない「スポーティなクルマ」と、スポーツドライブ以外の要素を切り捨てても許される「スポーツカー」の違いだと思います。そういうことからすると、このクルマは軽自動車でありながら、立派にスポーツカーなんですね。

 値段はイマドキのクルマらしく、MTのほうが高くて、必要なもの(ナビとか)をつけていくと200万円くらいになります。
 昔のビートとかもこんな感じでしたから、これはもう「欲しい人が買う」ためだけのクルマでしょう。
 ホンダからビートの後継が出るという噂があって、それが出るとライバルにもなるのかもしれませんが、それまでは唯一無二の存在です。

 オープン2シータということでいえば、マツダのロードスターという素晴らしいクルマもあるわけですが、これは昔に比べればかなり大きくなりました。
 そしてなにより、軽自動車というのは日本の税制上ものすごく優遇されていて、維持費を考えたら2リッタのロードスターとこのコペンは比べるべくもありません。
 もちろん、軽の税金が変わって高くなるなんて話もありますから、これがいつまで続くのかはわかりませんが。

 この手のクルマは、「一台ですべてをまかなう」のではなく、どちらかというとセカンドカーでしょう。
 もちろんこれ一台でなんでも、という人もいるでしょうが、多くはなにかメインに一台クルマを持っていて、遊び車としてオープンカー、みたいな感じにならざるをえないと思います。
 つまりまあ、ある程度余裕がある人のためのものではあるわけなんですね。
 それでも2リッタのクルマをもう一台持つには負担が重いけど、軽自動車なら年間維持費を考えても軽いので気さくに持てる、というのはあるでしょう。
 200万円という値段は、最近の軽自動車としてはわりと普通の値段になりつつありますし、「普段はミニバンだけど、一人で乗るならこれ」みたいな層にはすごくよさそうです。
 もちろん独身とかで2人以上を乗せることがめったになければメインカーとしても十分使えるでしょうけどね。

 このクルマ、軽自動車ですからカタログ上の馬力では64馬力しかなく(とはいえ、過去のカプチーノがそうであったように、実際はもっと出てる気がしますが)、早く走るという単純にそれだけが目的ならば、これを買う意味はまったくありません。
 確かにギアは気持ちよく入るし、音も気持ちいいし、軽自動車としてはかなり早いですが、それと絶対的なスピードというのはまったく別です。

 じゃあこれがスポーツカーというものとは別なのかというと、スポーツカーには「操ることの楽しさ」ってのがあるわけですね。
 クルマを操るという、動きとかをコントロールするという意味合いでは上にも書いたとおりかなり素直ですから楽しめます。これは別に馬力とか関係ありません。バイクで云うなら、原付でスポーツするみたいなもんです。大排気量・大パワーなスポーツバイクならではの面白さも、少ないパワーでバイクそのものを操ることを楽しむ面白さも、両方とも「バイクの楽しみ」であるってことです。

 首都高速とか峠道とか、そういうところでヨーイドンで競争してどっちが勝ち、っていうことだと、このクルマ……というか、軽自動車である必要性はほとんどありませんし、おそらく勝つこともできないでしょう(某クルマ漫画では、カプチーノが峠道で異様に早く描かれたりはしてましたが)。
 ただ、それなりに楽しめる領域で加速して、ちゃんと曲がり、ちゃんと止まるというこの動きは、ここ最近の全高・重心の高いワゴンをベースにした「スポーティな軽自動車」ではありえなかったことです。
 重心の低いクルマはほとんどがエコカーになり、「スポーティな軽」になると重心が高く車重があり、ワンテンポ遅れるCVTで64馬力のターボエンジンを制御する、「カスタム」みたいなグレードのものになるわけなんですが、やっぱり加速したい時の加速感はがんばってるとはいえスポーツカーのそれとはまったく別ですし、曲がるときも重心が高いから「よっこいしょ」という感じで、ワンテンポ遅れて屋根がついてくる感じがあります。
 で、これは仕方ないんですね。
 ワゴンというボディ形状はどうにもならないわけですし、スポーティに仕上げても、やっぱりワゴンである以上、「燃費」というモノがついてまわるわけですから。
 ちょっと雰囲気的にスポーティに見えて、標準車より足が固くてスポーティに走れます、というのが、この手の「スポーティ」の限界なわけですよ。
 逆にあの手のワゴンが、このコペンと同じように走ったとしたら、同乗車は乗り心地は悪いわ狭いわ音はうるさいわ、相当不快だと思います。
 そういう住みわけがあるからいいわけなんですよ。

 で、そんな中でのコペンだからこそ、このクルマには意味があるんだと思うんですね。
 それはもっと単純に、オープン走行がしたい、でもいいし、このスポーツカーな感じを味わいたい、でもいいんだと思うんですが、なんにしてもそういう面白さみたいなものを、軽自動車の維持費で楽しめるようにしたってのは、意味があることだと思います。

 200万円という値段が高いか安いかといったら、やっぱり安くはないでしょう。二人しか乗れない、たいして実用性のないクルマに200万円払える人というのは、やっぱりある意味でちょっと余裕のある人だとは思います。
 それでも、ロードスターとかに比べれば買った後の維持費は圧倒的に安いわけですし、えいやっと思い切って買う、ということがしやすいというのはすごくいいことだと思うんですよね。

 結局、「気持ちいい」ってのがポイントなんだと思うんですよ。
 スポーティな軽ワゴンでは、「よく走るなあ」とは思っても、「気持ちいい」まで行かないと思うんですよね。ハンドルを切って曲がる、アクセルとギアで加速する、ブレーキとギアで止まるっていう作業全体がいかに気持ちいいかに振れるってのは、やっぱりスポーツカー特権だと思うんですよ。
 それが、軽自動車の維持費で楽しめるってのは、ちょっとしたぜいたくとしてはすごく「アリ」だと思います。
 ひさしぶりにすごい欲しい!と思えるクルマと出会った気がします。
posted by TAKAMI Yui at 13:23| Comment(0) | 試乗

2014年03月14日

トヨタ・アクア

 出張で京都へ。
 その際に借りたレンタカーが、トヨタ・アクアでした。
 あ、写真撮り忘れた。

 アクアは以前試乗車に軽く乗りましたが、本格的に使うのは初めて。
 プリウスのように、操作系がなにがなにやらわからん、というものではないというだけでかなり安心できます。
 普通のオートマチック車と同じようにセレクタをDレンジに入れ、普通に手でサイドブレーキを解除するという、誰が乗ってもわかる操作系。

 で、実際に乗ってみると。
 排気量が小さいからか、CVTの燃費寄りのチューニングなのか、ここイッパツという加速のときも、もわーっと加速していくのはあまりかわりませんね。
 EVだから特別に力強いというわけでもなく。
 特に30〜40キロからの中間加速はかなり踏まないとダメで、かなり踏んでも踏みしろに対して加速は鈍いです。
 これはもう仕方ないのかな。

 そして一番の違和感、ブレーキ。
 これはもうプリウスもそうなので、ハイブリッド車に乗るならもうこれに慣れるしかないという「仕様」なんだと思いますが、回生機能がついているからか踏み始めがやけに急で、さらに踏みぬく直前もいきなりブレーキが最大値になる感じ。
 なんていうか、細かい段階を経て止まるんじゃなく、ダイヤル式のスイッチで操作してるような、そんなフィーリングですかね。
 慣れてくると、ゆっくり踏んで止まる直前にブレーキを抜くことで停止時のショックを和らげることはできるんですが、それまではどこまで踏んでいいのかわからなくなって、ちと怖いです。
 そんななので、高速道路での加速は苦手ですが、同じくらいのスピードで走り続けるぶんにはストレスはありません。120キロ巡航も可能です。

 それ以外は特に不満はないどころか、燃費はさすがにさすがなもので、エアコンをときどき使用して(雨が降ってガラスが曇ってたので)混雑する京都市内7割、名神高速でかなりハイペースで流して3割みたいな走り方でも、燃費は20キロ/1リットルくらい。
 渋滞での移動はむしろ得意ジャンルなはずなので伸びたというのはあるでしょうけどね。今回はかなり加速も激しく行ったし、高速道路も走ったのでアレですが、燃費走行というか、EVモードと回生を駆使した走り方をすればもっと伸びるハズ。
 ただまあ、普通に使ってこの燃費なら立派なもんだと思います。

 ハイブリッド不要論というか、20キロくらいの燃費ならガソリン車でもいいんじゃないかというのはよく云われることですが、もうほんとにその通りで、ハイブリッド車が宣伝する30キロとかって燃費は実際には出ませんから、ちょっとエコチューンしたガソリン車でもこれくらいの数字は簡単に叩き出せます。
 なのですが、じゃあ今回のアクアと、まったく同じくらいの排気量のヴィッツあたりをまったく同じ使い方をしたら、たぶん20キロは出ないと思うんですよね。
 渋滞でのゆるゆる進むときは余計に燃料を食いますし、エアコン入れたら燃料食うし。
 ずっと高速道路を走るような使い方ならいいんですが、混雑した渋滞の中を走るような使い方では、やっぱりどうしても燃費は悪化しちゃうんじゃないかと。

 だからもう、ハイブリッド車を選ぶかどうかってのは使い方次第で、渋滞の中のゴーストップとかが多ければ、同じ排気量のガソリン車の燃費は確実に上回ると思います。なので、ハイブリッド車がまったく不要でガソリン車でいいじゃん、っていうのは、やっぱりちょっと極論だと思うんですね。
 でも、これももうよく云われることですけど、じゃあヴィッツとアクアの価格差を考えたとき、その価格差を取り戻せるかっていうとこれはもう微妙というか、おそらく普通の使い方をする人では不可能だと思うんですよ。
 だからまあ、イニシャルの金額は高いけどランニングコストが安くなるハイブリッド車と、イニシャルは安いけどランニングコストはそれよりも若干高くなるガソリン車ということなら、おそらく後者のほうが圧倒的に有利だと思います。
 長く乗れば今度はバッテリ劣化の問題も出てきますしね。

 ただ、やっぱり「エコカー」っていう中で、ハイブリッドという技術は必要だと思うんですよ。
 クルマ好きの人ほどハイブリッド車が嫌いだったりするのはわからないではなくて、猫も杓子もエコカーはハイブリッドというのにだまされている感も嫌だし、乗り味もガソリン車のそれとはまったく違いますから、そういう意味でも嫌なのかもしれない。スポーツカー好きがミニバンとかを嫌うのとおなじですね。
 けど、クリーンディーゼルとか電気自動車とかいろいろある中でのハイブリッドは、少なくともひとつの選択肢としてあるべきだと思うんですよ。それぞれにメリット・デメリットがあって、ガソリン車の燃費が進化していくのと同時に、ハイブリッド車だって進化していくわけですから、将来的には値段の差もバッテリ交換の際の環境負荷や価格的な問題も解決するかもしれない。
 クルマがどこかしらで環境に負荷をかけなきゃ走れない以上、あらゆるカタチでエコロジーに取り組まねばならんわけで、その中でいまもっとも身近な技術がハイブリッドなわけですね。

 プリウスは運転マナーが悪いとか、坊主憎ければ袈裟まで憎しみたいなことになってて、単純に売れてて数が多いからマナーが悪いのも多いだけのハナシなんだと思うんですが、ハイブリッドをやたらと嫌うってのもそれはそれでどうかなあとは思うわけです。

 ……とはいえ、自分でハイブリッド車、たとえばプリウスやアクアを買いたいと思うかと云われたら別にいらないなあ、というのも正直なところなんですけど。
 上記の運転感覚や加速の違和感とかが嫌だし、なによりわたしの使い方では基本的に高速道路をずっと走るような使い方のほうが多いわけで、そのメリットがあまりありません。
 今回乗ったアクアも悪くないと思うし、価格を考えなければ街乗り車としては優秀だとは思うんですけどね。
posted by TAKAMI Yui at 15:22| Comment(0) | 試乗

2014年02月03日

ホンダ N BOX+

 以前も乗ったN BOX。
 これの+(プラス)というやつに乗ってきました。

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 最近ちょっとこの手の軽自動車が気になるのですね。
 別に買おうと思うわけではないんですが、もしほんとに近所を転がすだけの足グルマとしてなら、これってかなり優秀だと思うんですよ。
 ワゴンRとかは結局「頭の上が広い軽自動車」な感じであんまり興味が湧かなかったんですが、ダイハツ・タントが切り拓いたこのリアスライドドアの軽ワゴンって、軽バンほど床が高くないのでバイクとかも積みやすいし、乗用車としてもリアシートの足元が広くてストレスはないしで、近所を走るクルマとしてならすごくいいんでないかなと。
 軽じゃなくて白ナンバの普通車なら、もうちょっと走行性能とかにも余裕ができていいんじゃないかなあとも思いますが、これだとスズキ・ソリオしかないんですよね。

 で、前に乗ったのは普通のN BOXのNAのもので、これは確かに広さは申し分ないもののやっぱりちょっともっさりしている感じがありまして。
 まあ、こんなものかなあと思っていた中、プラスというユーティリティ仕様が出たというのは聴いていたんですが、なかなか見に行く暇がなく、ようやく近所のホンダに実車があったので見てきた、という次第。

 これの一番の特徴は、FFレイアウトならではの、キャブオーバやFRの軽バンではありえない床の低さです。
 それはもちろんプラスではないN BOXでも同じなんですが、このプラスはその恩恵が荷室にあること。
 リアゲートを開いてみると一目瞭然。

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 シートの金具や補機類があるので、低床のままフラットではなくて坂道になっており、これがどうかなというところはありますが。
 ただ、開口部の広さと低さは他に類をみませんし、最後端では立って入っても軽くかがむくらいですむので、たとえばバイクを入れようとするときなんかは作業はしやすそう。
 ただし、スロープ状になってるということは入れたらしっかり固定しないといけないので、そのへんは気を使う必要はありそうですが。
 広さ的には、モトコンポやモンキーはもちろん、スクータくらいならミラーをたたまずに入るかな?という広さです。
 さすがにいっぱいいっぱいになっちゃうでしょうけど。
 モンキークラスなら、2台積んでもまだ余裕がある感じ。
 オプションとしてバイクなんかを積むための収納式アルミラダーも用意されていて、これなんかは便利そうですが、これがなくても床が低いのでそんなに大変ではなさそうです。
 まあ、収納できるコンパクトさを考えればつけたほうが便利なんでしょうけど、これ15万円近くするのでちょっと考えてしまうところですね。

 そのかわり、タントや普通のN BOXではちょっとしたリムジンのような広さのあった後部座席はかなり余裕がなくなっていて、足元はカローラとかそのへんのセダンくらいかな。
 足元広々なユーティリティワゴンを想像するとかなりがっかりきますし、身体が大きい男性とかだと間違いなく「狭い」と感じるクラスなので、荷室をとるか後部座席をとるかですね。
 ちなみに、ノーマルのN BOXは、フィットと同じように後部座席の座面をハネあげることができて、ここはプラスの後部座席と床の低さが同じで、さらにここはフラットなので、モンキーくらいまでならここにミラーなどをたたまずに入れることができそうです。スライドドアなので入れるときに手狭な感じもありません。
 ただし、サイドシルがあるので、荷室に比べれば入れやすさは若干劣りますし、入れたあとの手狭感もあります。
 でもまあ、モンキーくらいならここにも十分入りますし、リアに入れてもどうせ後部座席は使えないので、頻度が高くなければプラスでなくてもいいかもしれません。

 で、今回乗ったのはターボ。
 カスタムでない普通のやつで、マイナーチェンジ前のものなのでアイドルストップがつきません。
 さすがにターボだともっさり感はほとんどなく、踏めば踏んだだけ加速するので悪くなさそうです。音はそれなりに入ってくるので、高速道路をずっと走るような用途だと運転疲れするかもしれませんが。
 ただ、アシグルマとして考えるなら、ターボじゃなくてもいいかもしれません。ターボは主に出だしのところで効いてくるので、ゼロスタートはNAとは段違いに普通に運転できるのですが、逆に云えばそこだけ我慢すればいいわけなので。
 ただし、高速道路を走るとか、流れの速いバイパスを走ることが多いなら、ターボのほうが圧倒的にストレスなく使えるでしょう。
 まあ、基本的にはターボのほうがいいんですが、これが後から触れる価格の話に響いてくるんですね。

 あと、なぜかこの車体固有のものなのかわかりませんが、ブレーキがやけに重く、ちょっと力を入れて踏んではじめて効きはじめる感じがあります。
 全高が高くて重心は高いものの、軽バンや軽トラックに比べると重いものが下にあり、足回りも乗用ベースで組まれているので、ロールもそれほどありません。乗り心地もよくはないですが悪くないかな、というレベル。
 よかったのはパワステで、軽自動車特有の妙に軽くてくるんくるん回る電動パワステの感じではなくて、少し重さがあって走るのにストレスがないこと。
 街乗りだから軽ければいいというものではなく、直進時は重いほうが安定するわけなんで、これはいいかもしれません。

 ということなんで、クルマ自体は間違いなくよくて、アシグルマとしてはもちろん、それほどの長距離でなければこれ一台のクルマとしても使えると思いますが、問題なのは価格です。
 プラスのターボに、カーナビとETC、HIDライト、あんしんパッケージ(小さいクルマだからこそサイドエアバッグ類は絶対あったほうがいいと思います)をつけると、総額は210万円とかになるんですね。
 カスタムになるとさらに10万円アップです。
 フィットのハイブリッドとかにも手が届く値段。
 ナビは安物で済ませる前提ではずして、やっととりあえずの金額が200万円を切るわけです。
 アシグルマにこれだけの金をかけられるかというとなかなか難しいわけでして、メインのクルマとしてならまあ許容範囲かなとは思いますが、それでも軽自動車に200万円が払えるかどうか、というところでしょう。

 まあ、そのかわりキーレスやオートエアコンなど、ちょっと豪華な装備が全部ついていて、NAにしてナビやHID、あんしんパッケージをはずせば50万円くらい安くなりますので、アシグルマとしてはこれくらいが限度な気がします。
 でもやっぱりあんしんパッケージだけでもつけたいなあというのはありますが。

 ただこれは別にホンダだけのことではなくて、タントなんかでもやっぱりターボモデルになると相応の値段になってしまいますから、この手の軽自動車はすごく便利で使いやすくていろんな意味で理想的なかわりに、相応のコストを要求されるってことですね。
 こうなってくると、そもそも軽自動車だから安い、という発想を変えないといけないのかもしれません。
 反面、ミライースやアルトエコのような、「安くて燃費もいい」アシグルマ向きのクルマもあるわけなので、ほんとに足代わりでよければこちらのほうがいいでしょう。
 ただし、そのクルマを使って遊ぶとかいうことではなく、本当に移動のためのクルマになってしまいますけど。

 N BOXプラスが凄いのは、カタログを見ても、「こういうことができたらいいかもなあ」というのに気付かせてくれて、「なんか楽しそう」感がすごくあることです。
 ちょうどちょっと前のミニバンやワンボックスが、フルフラットシートや回転対座シートなど「なんか楽しそう」な装備を満載していながら、実際にそれを使うことはない人がほとんどだったような感じですかね。
 N BOXプラスも、フラットシートの上にマットレスをひけばフラットなベッドになります、なんてのがあって、このマットを積んじゃえば荷室は圧迫されるし、クルマの中で寝なければならないくらいのときは(震災のときとかは別にして)、運転中もう眠くて仕方ないからちょっと寝ようなんてことでしょうし、そんなときにシートを倒してフラットにしてマットを引いて、なんてことやっとれんと思うんですよ。
 キャンピングカーでさえも、常設ベッドがないといちいちベッドを作らなければいけないのがめんどくさいわけなんで、「寝たい」と思うときに作業をするというのはすごい億劫なんですね。
 でも、カタログで見れば、ベッドになる室内も、2段式になってて床下に台車とかが収納できて荷物がたくさんつめるのなんか「なんか楽しそう」だし、これがあればなんかいろいろできることがある気がする、みたいなのはあるでしょう。
 ボンゴフレンディのポップアップルーフにしてもそうですが、実際に使うかどうかではなくて、「実際に使ったら面白いだろうな」と思わせることが大切なんですね。
 それが実際に使われる回数はクルマを買ってから売るまで3回しかありませんでした、でもいいんです。
 だって、スポーツカーだって「普通に走るだけなら時速200キロもでる必要ないけど、早く気持ちよく走れたらいいな」という思いから、高性能エンジンやサスペンションっていう付加価値に対してカネを払うわけですからね。
 オープンカーなんか買ったって日本じゃ屋根を開けて走れる季節なんて限られてるけど、屋根が開いたら気持ちよさそうだなあっていうそういう思いを買うわけです。
 ワンボックスの対面対座シートも、オープンカーの開く屋根も、実際に使ったら別にいらないし使わないことのほうが多いけど、あったら楽しそうだって思わせてくれて、それを何回か使ってやっぱり不便だなあめんどくさいなあと思ってあんまり使わなくなって、でもそれがついてることがクルマに対していろいろ夢を膨らませてくれる、みたいな。
 クルマが面白いとかつまんないっていうのは、別にスポーツ走行ができるかどうかじゃなくて、そういう「なにか楽しそう」って思わせる付加価値を持たせるクルマの存在なんじゃないかなあ。
 もちろん走ってていらいらするような走行性能じゃダメですけど。
 ミニバンがクルマをつまらなくした、っていうのはちょっと違ってて、「ただ人が乗れるだけのミニバンがクルマをつまらなくした」っていうのが正解なんだと思います。

 それがいまだと燃費とコスト一辺倒になってしまって、燃費や値段のためにそういう遊びの要素が削られていくから、「クルマがつまらない」ってなことになっちゃうのかな、と。
 その感じはやっぱりミライースみたいなクルマでは難しいことですし、そもそもミライースとかアルトエコみたいな燃費スペシャルのクルマはそういうものを狙って作られているわけではありません。
 逆に、そういう「楽しそう」さみたいなもので考えれば、タントにしてもデイズルークスにしても、あるいは普通のN BOXよりもプラスのほうが確実に多く突っ込まれています。
 これってもう完全にメインカーとしての使い方なんですよね。
 だから、そういう「なんか楽しそう」感を買うんなら、210万円は決して高くはないのかな、とも思いますし、使い方によってはこれ一台で買い物から旅行まで済ませることもできるでしょう。

 逆に、これを駅までの送迎とスーパーでの買い物にしか使わないんであれば、そういうものはまったく無駄ですし、多少後部座席の足元が広くても意味はあんまりないでしょうし、駐車場を選ばないという意味ではミライースとかのほうがいいでしょう。
 燃費もよくなったとはいえ、試乗車のN BOXターボでリッタあたり12キロですから。ミライースとからなもうちょっと走るでしょう。

 特にホンダのNシリーズは、N ONEもNワゴンも、「安くて足代わりの軽自動車」ではなくて「メインカーとして使ってもいい、プレミアム軽自動車」を意識して作っている感じがあって、それが標準装備のキーレスやオートエアコンだったりするんだと思います。
 軽は安くなくちゃいけないわけではないので、そういうのがあってもいいでしょうから、これはこれでアリなんだと思います。実際余裕があるなら欲しいですしね。

 とかく、FFベースでエンジンをフロントに追いやり、クルマの後ろ3分の2のほぼすべてを居室に使い、床を低くしてスライドドアでリアへのアクセスをしやすくするというこのカタチというのは、ある意味でもうクルマの一つの形なんだと思います。
 背の高いラウムというか、ふたまわりちっちゃいアイシスというか。

 ただそれなら、やっぱりソリオ以外にも白ナンバの「足代わりにも使える、ヴィッツ以上カローラ以下」のコンパクトカーがあってもいいと思うんだよなあ。
 特に軽自動車の税金が上がるかもって話がある現在なら、そういうニーズは少なくないと思うんですけどね。
posted by TAKAMI Yui at 16:27| Comment(0) | 試乗

2014年01月24日

トヨタ・プレミオ X 4WD

 仙台に取材に行くことになって、昨日帰ってきたわけですが。
 行き帰り自体は時間の都合で新幹線だったのですが、現地での移動はレンタカーです。
 で、今回借りたのが(というか出てきたのが)トヨタのプレミオ。
 カローラくらいのクラス、という話だったんですが、それより1つ上のクラスですね。
 といっても、セダンなので、カローラより劇的に広いとかいう感じはしないです。
 見た感じの印象も、カローラよりよく見るとひとまわり大きいかな、くらいの感じで(実際これも5ナンバですからあんまり変わらないんでしょうけど)、ヘッドライトやグリルが大きめにデザインされていて、ミニ・クラウン的風情はあります。

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 普段乗る車としてあんまり積極的に選ぶクルマではないので、ある意味貴重かも。
 都内ではあんまり見ることもなくて、見かけると警察の覆面パトカーだったりすることが多い、くらいの印象です。
 おそらく1.5リッターの「X」というグレードで、北国らしく4WDでスタッドレス装着でした。
 ミッションはCVT。
 オートエアコン、バックカメラなど装備はひととおり揃っていて、メータなんかもぱっと見た感じはけっこう高そうなクルマな印象。

 んが、これ、けっこうよく走ります。
 CVTのもっさりした感じはまったくなく、これならCVTでもいいかなと思えるくらい。
 二人乗車での移動だったんですが、高速道路でもまったくストレスなく100キロ巡航できる余裕がありました。
 電動パワステが軽くてちょっと違和感はありますが。
 それでいて燃費もリッタあたり10キロ以上は楽に走るので、このあたりはやはりイマドキのセダンですね。

 ただし、4WDだからなのかスタッドレスだからなのかわかりませんが、乗り心地というか足回りはかなり固いです。E46のMスポーツと同じくらいといっても過言ではないくらい。
 エンジン音は室内にほとんど入ってこないくらい静かなので、ちょっと不思議な感じ。

 しかしまあ、ミドルクラスのセダンとしては、中庸だけどその中庸さがいい、というのはわからないではないです。
 なによりこれくらいCVTもチューニングされてれば、それほどストレスはないんだなあというのを実感できただけでもよかったかもしれません。
posted by TAKAMI Yui at 13:07| Comment(0) | 試乗

2013年04月28日

フォルクスワーゲン up!

 前から乗ってみたかった、フォルクスワーゲンup!です。
 アマダレが正式名称についてる車名なんてはじめてじゃなかろうか。

 クラスとしては欧州のAセグメント、つまりもっとも小さなボディサイズともっとも小さな排気量のエンジンを搭載したモデルになります。ゴルフはもちろん、ポロやルポよりさらに小さく、日本でいえば軽自動車、欧州車ならフィアットの500あたりとバッティングする車種になるでしょうか。
 つまり、メインの用途としては、普段は一人で乗って動き回る人向けの、ほんとに足代わりとして使用されるシティコミュータとしての乗用車です。

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 デザインは見てのとおり、割と質実剛健というか、トヨタ車だと云われたら「ああ、なるほど」と納得してしまいそうな地味なデザインです。いかにも実用車ですね。
 500のような色気や愛嬌はまったくありませんが、そのぶん誰がどこに乗っていっても違和感は感じさせないつくりな気はします。500ははっきりいって人を選びますからね、あれ。
 非常に嫌味のない、街に溶け込むデザインではありますが、云い方を変えれば無個性(これはもちろん、ある程度狙ってそうしてる感はあると思います)なので、国産車のデザインをけなしてこれをやたらと褒める評論家の方々の感覚ってのはわたしにはちょっとわからんなあ、ということになってしまうんですが。

 ただし、2ドアの横から見たデザインは結構悪くないです。
 この手の超コンパクトカーってどうしても寸詰まりに見えてしまうのですが、2ドアでさらにリアウインドウの下側がハネ上がっているデザインになっているので、これだけでもかなりカッコよく見えます。
 逆に4ドアはほんとに無個性。アルトやミラみたいな日本の軽自動車のデザインと同じ路線ですね。上にも書いたとおり、それは必ずしも悪いことではないんですが。

 インパネ周りはこんな感じ。

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 ドヤァ!と云わんばかりのシンプルさです。
 500もこんな感じでしたが、やはり500よりも「シンプルである」ことに徹していますね。
 センタにはエアコン(マニュアル)とCDプレーヤが鎮座していて、1DINなどの規格ではないので、このCDプレーヤは変えることができません。
 AUXの端子がついているので、iPodなどは外部入力で使うことはできますが、いかんせんちょっと古い感じはあります。
 当然、ナビはオンダッシュのPNDしかつきません。
 質感がどうのこうのという感じではありませんが、不思議と安っぽい感じがしないのは、500も同じです。
 ドア周りなんか鉄板むき出しだったりするんですけど、それが却って割り切った感じがするんですよね。
 無駄なところにカネはかけない、という姿勢はある意味徹底した合理主義でのクルマ作りを行う欧州車の基本なのかも。

 こんなんですが、シートは欧州車らしくしっかりしていて、前回のミラージュのような「座面の短さ」は感じません。
 別にいまどき、欧州車のほうが国産車よりすばらしいなんてなことを云うつもりはありませんが、この標準シートの出来だけは国産車がまったく追いついていないところだと思います。
 それでいてパッケージングがしっかりしてるのか、後ろの座席に座っても狭さはあまり感じません。頭上がかなり余裕があるので、窮屈な感じがしないんですよね。
 2ドアも4ドアも室内の広さは同じですので、2ドアだから2+2、と割り切る必要はないです。
 もちろん広々足も組めちゃいますよという感じではないですが、普通に乗って普通に移動するだけなら問題はありません。
 4人乗りなのですが、どうせこの手のコンパクトカーに5人なんてきつくて乗れないでしょうから、これはこれでいいのでしょう。
 ただし、2ドアのリアウインドウが開かないのは仕方ないにしても、4ドアでもリアウインドウは換気程度に少し開くだけです。
 昔のワンボックス車のリアウインドウみたいな感じ、っていうのかな、10センチくらい開くだけ。
 これはちょっと閉塞感があるかも。

 トランクは普通に使える広さです。このクルマの使い方を考えれば十分すぎる広さでしょう。いや、むしろ「広い」と云える広さですかね。
 2人の旅行なら余裕がありすぎるくらいですし、リアシートを倒せばほぼフラットになりますから、手狭感はまったくありません。

 エンジンは3気筒1000ccのフツーのエンジンです。このエンジン以外には設定はありません。
 加給もしてないし、なにか特別なギミックもありません。エンジンストップみたいな機能もないし、出力もNAで75馬力。ほんとに「フツーの」としか書けない、スペック的にはどってことないエンジンです。
 それに、フォルクスワーゲン新開発の「ASG」というミッションが組み合わされます。3ペダルMT車の設定はありません。

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 フォルクスワーゲンといえば、トルコンを使わないツインクラッチのオートマチックミッション「DSG」が有名ですが、この「ASG」はツインではなくシングルクラッチになります。
 これもトルコンではなく、ほんとうに普通のクラッチを切ってつないでという作業をオートでやってくれるだけのものなので、基本的な機構はマニュアル車です。なので、クリープはありません。NレンジはありますがPレンジはありません。
 アルファロメオのセレスピードや、フィアットのデュアロジックと同じもの(製品が同じという意味ではなく、機構が同じ、という意味で)です。

 5速ギアですが、自分で変速できるマニュアルモードがついている……という云い方は正確ではなく、クラッチなしでマニュアル操作ができるオマケに、変速操作をしないでもいいオートマチックモードがついてくる、という考え方ですね。
 これは別に極端な云い方ではなく、このクルマは基本的に変速操作を自分でやって動かすクルマです。このへんは後述。

 さて、いよいよ動かしてみました。試乗車はhigh up!ですが、基本はどれもいっしょです。厳密には4ドアのほうが2ドアよりちょっと重たいくらい。
 サイドブレーキをおろし、ギアをとりあえず「D」に入れ、オートマチックモードで走ってみます。
 クリープがないので、多少アクセルを大きめに開けてやらないと走り出しません。
 大きな道に出て走ってみると……これがまた、すっごい違和感があるんですよ。
 感覚よりちょっと多めにアクセルを開けてやる必要があるのはこのときも同じなのですが、変速のときに、一度クラッチが切れてまた繋がる瞬間がはっきりわかるんですね。
 マニュアル車に乗ってる人なら当たり前の話ですが、変速時には、アクセルを離してクラッチを切り、エンジンからの動力を切断してからギアを入れかえ、またクラッチをつないでやる、というプロセスが行われるわけなんですが、これがまたマニュアル車よりもコンマ何秒か遅いんですね。
 なので、このオートマチックモードで走っていると、加速→動力が切れて変速→また加速、というのを肌身で感じてしまうことになるわけです。アクセル全開の状態でもそれが起こるので、この違和感は相当なものです。
 マニュアル車の場合、クラッチを切るのはドライバですし、当然その瞬間というのはドライバが意識してますからそれに対して無意識のうちに構えると思うんですが、それをオートでやってくれるということだといつそれがくるかわからないので(回転数を見てればわかるんでしょうけど)、ものすごい違和感が出てきてしまいます。
 慣れれば大丈夫、ということなのかもしれませんが、これに慣れるのもどうかなあという気がしますね。
 これならトルコンATのほうがよっぽど自然です。

 ところが。
 これをMTモードにすると、もう別のクルマのような走りにかわります。
 MTモードは、もう一度ミッションレバーをD/M側に倒せばMTモードに固定、Dレンジでもシフトレバーを変速側に倒せば一時的にMTモードに切り替わり、一度停止するとまたオートマックモードに戻ります。
 そうして切り替えて走ると……これはもう、すばらしいの一言。これだと、変速時のクラッチ断続も自分でコントロールできますし、それ以上にこのエンジン、低いギアで引っ張るとまったくストレスのない加速を見せてくれるんですよ。
 一気に「キビキビ感」が増すんですね。
 先にも書いたとおり、エンジン自体は「なんの特徴もないエンジン」ですが、これだけで「振り回して面白い」エンジンに変わります。
 もちろん実用エンジンですから、スポーツカーのような官能性はまったくありませんが、少なくともストレスはまったく感じなくなりますし、CVTのようなアクセル開度に加速が追いつかないもっさり感にいらいらさせられることはもちろんありません。
「このクルマのメインはマニュアルモード」と上に書いたのはこのためです。普段マニュアル車に乗ってるわたしが違和感なく操作できてるわけですから、オマケでついてるような「変速できるAT」よりもかなりマニュアル車に近いです。
 もちろんわたしにとってはクラッチのついた3ペダルのマニュアル車がベストですが、それがどうしてもないならこれでもいいかなと思えるくらいの出来です。
 もちろん基本機構がマニュアルなので、駐車場内とか普通のオートマチック車ならクリープで走るようなところもアクセルを開けないと走らないとか、マニュアル車なら半クラッチでクリープみたいな感じで動かせますから、オートマチック車でもマニュアル車でもないアクセル調整が必要になったりするところはありますが。
 ちなみに、街中ではほぼ3速でストレスなく、流れに乗って走れるので、せわしなくギアチェンジする必要はまったくありません。それも鑑みて、基本マニュアルモードで乗るクルマです、これは。

 足回りやパワステの重さは欧州車のそれで、「ちょっと硬い」し「ちょっと重い」です。
 国産車に乗りなれてると、街中では違和感を感じるかもしれませんが、高速道路ではこれが安定に繋がります。

 で、これで、燃費はカタログで24キロ。
 実質でも19キロくらいだそうです。
 プレーンなガソリンエンジン車としてはかなりがんばってるほうでしょう。
 燃料タンクは35リットルで、若干心もとなくはありますが、欧州車は国産車と違って高速道路に入ったときの燃費の伸びが尋常でない(E46 330iで15キロとか)ので、高速道路で給油についてそんなに心配することはないと思います。
 ただしひとつ気にしなくてはいけないのは、小さくても欧州車ですから、燃料にハイオクを要求されます。
 なので、プリウスの実燃費が20リットルくらいだからこれとかわんないじゃん!とか云っても、1リットルあたり10円の値段上昇は見越しておかないといけません。
 ま、35リットルですから、満タン給油でも差額は350円にしかなりませんが、それでも経済性で考えればここは見逃せないところでしょう。
 あの元気なエンジンも、ハイオクを要求してくればそれはそうだよという考え方もできるので、このあたりの考え方は微妙なところですね。

 安全装備はものすごく充実していて、横滑り防止装置、サイドエアバッグ、衝突防止のオートブレーキ(前者に接近しすぎると自動的にブレーキをかけてくれるシステム)とか、至れり尽くせりという感じ。小さい車ほど衝突時のダメージは大きいわけですから、パッシブセーフティの考え方に基づいたこういう装備というのはより有効なんでしょうね。
 衝突防止ブレーキはやりすぎかなあと思ったんですけど、わざわざこんなクルマを選んで買うような人はこれによって値段が数万円アップしてることなんか気にしないでしょうし、このほうがお得感はあります。

 で。
 グレードは2ドアと4ドアのmove up!と、4ドアの装備充実版であるhigh up!の3つ。
 move up!2ドアが149万円、4ドアが168万円、high up!が183万円で、エンジンなどはまったく同じでドアの枚数と装備が違うだけです。
 high up!にはクルーズコントロールや6スピーカなどのほか、なぜかシートヒータがついていたりしてよくわかりません。タイヤもアルミがつき、move up!の14インチに対して15インチになります。サンルーフというかガラスルーフの設定はこのhigh up!にしかないのがサンルーフ好きとしては残念なところかも。
 オーディオやエアコンはどのグレードにもついてますし、ナビは純正品でもカロッツェリアのPNDなので、たぶん量販店とかで買ったほうが安いでしょう。
 ただし、純正装着だと配線がきれいに隠れるのでこれは悩ましいところです。
 ダッシュボードがシンプルなので、シガライタソケットまでのケーブルを這わせたりすると結構目立つと思うので。
 純正だと工賃や取り付けキットなど入れて8万円くらいだそうなので、いっそのこと量販店で買って常においておくのではなく、使うときだけクルマに持ち込む、くらいの感じでいいのかもしれないですね。

 んで、これはもう、2ドアで十分というか、2ドアの買い得感がものすごいです。
 high up!はこれ一台でメインにもするよ、という用途に向けたものでしょうから、このクルマの性質上ちょっとここまで出すのはもったいないにしても、move up!の4ドアでもちょっと2ドアとの価格差が大きすぎます。
 どうせ後ろの窓は開きませんし、このクルマに3人以上乗ることが多いという人はそんなに多くはないでしょうから、存在価値が大きいのはやはり2ドアですね。
 もちろん、このスタイリングに惚れたとかでこのクルマをメインとして使うのであれば、圧倒的に4ドアのほうが便利ですし、それなら思い切ってhigh up!でいいかなということになるかもしれません。
 が、いわゆる足グルマとして近所の買い物がメイン、ときどき1人2人でドライブ、くらいなら2ドアのほうがコストパフォーマンスは高いです。もちろん2ドアでも後部座席や荷室の広さは変わりませんから、2ドアをメインとして使うことだって十分に可能です。

 このクルマ、「優秀なクルマがいっぱいある日本にいて、なんでわざわざ輸入車を買うのか」を教えてくれている気がします。
 メルセデスやBMWは、「クルマとしての出来が云々」を語る以前にひとつの「ブランド」です。Cクラスや3シリーズというのは、排気量やボディサイズから考えれば、日本車でいうところのプレミオやシルフィ、ちょっと大きくしてもレガシィとかそのあたりと同じクラスですが、それに比べて200万円近く高くてもわざわざそちらを買うのは、やはりその「ブランド」を買っているところも少なからずあるでしょう。
 Aクラスや1シリーズだって、知らない人からみれば「ベンツ」であり「ベンベ」です。

 に対して、「実用車」であるこのクルマを日本の市場に売り込もうというとき、価格が安ければ商売になる、というフォルクスワーゲンの判断はすごく正しいのだと思います。149万円という価格はそういう戦略的価格で、ハイトタイプの軽ワゴンだとこのくらいの値段になることもありますから。
 でも、1000ccのコンパクトカーとして考えれば、ライバルはパッソやマーチ、ミラージュですから、実用的に使い勝手のいい4ドアとの価格差は50万円近くになってしまいます。
 メルセデスやBMWのような「ブランド」ではない、かといって豪華でもない、ものすごく使い勝手がいいわけでもない、「安全である」ことと「しっかり作ってある」ことのみで勝負をするというのは、やはり量販車としては相当きついでしょう。

 フィアット500やBMWミニ、フォルクスワーゲンでもTHE Beetleあたりになってくると、ステータスというよりも「ちょっとお洒落」感が少し強くなってきます。国産車にない個性みたいなものを求めるならこれらは替えがきかない存在です。これもそういうデザインだったり雰囲気だったり、あるいは走りだったりみたいな、そういうものに対してやっぱり100万円以上の付加価値を見出すわけですね。
 もっとも、これはもしかしたらフォルクスワーゲンというメーカ自体もそういうものなのかもしれません。
 メルセデスやBMWのような「圧倒的なブランド力」はありませんが、「クルマに対してちょっとこだわりがある、コンパクトカーが好きな人」にとって、ゴルフやポロはうってつけでしょうから、それよりもさらに小さいクルマがラインナップされたというだけなのかも。
 ただ、ゴルフにしてもup!にしても、500やミニのような色気のあるデザインではありませんが、ドイツ車の場合それがいいんだっていうのもあるかと思います。
 いやま、ミニも今はドイツ車ですけど。

 確かに、国産車のこのクラスはもはやミッションはCVTばかりで加速はもっさり、エンジンも燃費ばかりを追い求めたなんの刺激もない走行性能で、高速道路なんか走れたもんじゃないような操舵感みたいなクルマがどうしても多いですから、up!のそこに対しての付加価値ははるかに高いです。前回のミラージュの時に書いたような、「白物家電のような扱いで一生を終える」クルマ以上の価値を見出すことができるクルマだと思うんですよ。
 それに対して、いわゆる快適装備が充実し、モノ入れやドリンクホルダなどが便利にある国産コンパクトカーや軽ワゴンの「目に見える快適さ」はありません。
 ドアやリアハッチなんか鉄板むき出しですし、質感?なにそれ?ってなもんです。このあたりの割り切りもまた欧州車的ではあるんですが、そのぶんは骨太なボディ(実際、ドアの厚さや段差を乗り越えた際の剛性感などは国産車のそれとはまったく違います)、横滑り防止装置などの安全装備、こんな小さいのにしっかり座れるシートに行っています。つまり「目に見えない快適さ」にコストがかけられてるんですね。

 さて、これをどう見るか、ということなんですよ。
 最初にも書いたとおり、このup!というクルマはシティコミュータであり、実用車です。足車として、つまりまさに白物家電として役割を終えるべきクルマなんですね。
 ところがそんな白物家電なのにもかかわらず、趣味車としても通用するクルマになっているということなんですよ。クルマ作りに対しての考え方が異なる欧州から「実用車」を持ってきたら、こんなに違ってた!というだけではあるのですが。
 当たり前のハナシ、こんなに小さくても「欧州車」なんですよ。もっとも、フォルクスワーゲンというのは本国では大衆車メーカですから、日本で販売されているゴルフやポロが高すぎるだけなのかもしれませんが。
 つまり、そういう欧州車的エッセンスが149万円で買えるというのは、欧州車の乗り味が好みな人にとってはもう間違いなくお得なんですけど、実用車としてフィットやヴィッツを買おうという人がこれを検討の場に上げるかというと、まあ、あがらないと思うんですよね。
 ミラージュのときにも書きましたが、一生80キロ以上のスピードを出さないで終えるクルマなんていっぱいあって、その多くはこういう「足車としての実用車」なわけですから。
 値段は高い、それでいて目に見える装備はしょぼい、燃料はハイオク、普通のオートマチック車として使うと違和感のあるシフトなど、足車としてこれを選ぶ理由なんかないわけです。

 逆に、しっかりした足回りやボディ、そこそこ重いパワステは高速道路では抜群の安定性を誇りますし、高速道路での燃費はおそらくギア比が低めに設定されているトルコンAT、あるいは回すと燃費が悪化していくCVTを搭載する国産コンパクトカーよりもよくなると思います。また、オートマチックでありながらある程度エンジンを自分で制御できるASGミッションは、趣味車としてもよくできています。
 その付加価値って、まったくもって日本国内で足車に求められるものではないので、これを選ぶ理由って、もう「ガイシャ」のブランドでもない、人と違うお洒落なものが欲しいとか、足車でもある程度楽しみたいとか、そういうものに対して50万円をプラスして払えるかどうかなんですよね。
 これはコンパクトカーだから顕著なだけで、「ブランド」を差し引いたあとに残る欧州車の魅力みたいなものに対してのプラス価格を払えるかどうかってのは、クラウンかEクラスか、レクサスLSかSクラスか、みたいなクラスでも起こりうるハナシなわけですね。
 それでもこのクルマを選ぶ、という人は欧州車的な乗り味が好きなわけで、そこに「ガイシャを買う理由」が詰まってるわけです。

 こういうクルマって、国産車では出てこないっていうか、出せないんですよねきっと。
 クルマとしての基本性能や安全装備が充実しているけど、鉄板とかはむき出しで関係ないところにはカネをかけてません、でも安いです、みたいな足車って、やっぱり上記の理由……つまり、足車に求められるモノの違いから、作っても売れないんだと思います。
 同じようなコンセプト、同じようなサイズで、トヨタには欧州専用車として「アイゴ」というモデルがありますが、日本ではこれでなくそこそこ豪華でそこそこ使い勝手のいいパッソを売ってるわけで、特に女性ユーザが多いこのクラスで、鉄板むき出し豪華装備なしモノ入れなしマニュアル操作必要なクルマってのは厳しいよなあということなんでしょう。
「とりあえず安価な足車だけど、なんか楽しい」というのでは、ダイハツ・エッセecoあたりがそれにあてはまりますが、あれももうすでになくなっちゃったわけですし、まあ、やっぱり市場が求めるものが違っているんだろうなということですね。

 というわけで、クルマが好きな人が足車として買うのなら、国産車より間違いなく満足できると思います。メンテナンスなどの維持費用、燃料代(ハイオクですから)などは国産車よりもかかりますし、DSGがそうであるように故障が不安なところもありますが、白物家電のような国産足車ではちょっと物足りないなあという層にはこれはジャストフィットでしょう。
 ていうか、足としてならわたしもこれ、欲しいです。買うなら迷うことなく2ドアですね。装備なんかなんもいりません。ETCだけありゃいいかってなもんです。
 んでも、それならそれで、2ドアモデルだけでも本国にある3ペダルMTという選択肢があってもいいかなあという気はしますね。
 上にも書いたとおり、この2ペダルMTでも不満はさほどないですし、これならオートマチックでもいいかなあというギリギリのところではあるんですが、やっぱりそれならもういっそのこと3ペダルMTでいいじゃんってことになってしまうわけで。
 クルマ好きに向けて売るんなら、メルセデスがMT車を出してきた昨今、そんなのもありだと思うんですが。
posted by TAKAMI Yui at 21:38| Comment(0) | 試乗